『アルレッキーニ』(1965)
ジョルジュ・ステファネスク
開幕前の静けさ。互いに密接し、模倣しあい、絶えず共鳴する2つの世界を仕切るのは、重厚な深紅の幕。舞台から現実世界へ、あるいは、空想から実態へ。その境界は僅かな一歩…あるいは櫛一本の距離に過ぎません。
演劇といえば、16世紀中頃イタリア北部で誕生した、仮面を使用する即興演劇コメディア・デッラルテをご存知でしょうか。
仮面を被った個性豊かなキャラクターがイタリア風の大げさな身振りで次々と舞台に登場します。俳優の演技力や舞台装置、軽妙な台詞回しもさることながら、〈ビュリー〉が特に注目するのは、光彩を放つ衣装や神秘的な仮面、そして幻想的なヘアスタイルです。
なかでも、このイタリア演劇にしばしば登場するキャラクター「アルルカン(道化師)」が私たちを魅了します。「アルルカン」の誕生にはまだ多くの謎が残されていますが、中世フランスの伝説に登場する、ずる賢い悪戯者「ハーレクイン」が由来とされています。
『イタリア風の楽屋』(1874)
エヴァ・ゴンザレス、オルセー美術館所蔵
コメディア・デッラルテに決まって登場する人気者として舞台に登場しはじめた頃の彼は、色鮮やかなダイヤ模様の衣装をまとい、飲酒と大食い、睡眠、道化とおふざけだけが楽しみという、すこぶる単純な愚か者として描かれていました。
のちにレニャール、ルサージュ、マリヴォーのようなするどい観察力と天才的な表現力をもつフランスの劇作家たちの作品によって、「アルルカン」像にはより深みと奥行きが加わりました。
彼は次第に知性と狡猾さを身につけ、尽きることのない精力と鮮やかな衣装をまとった、いたずら好きな従者という普遍的な性格を象徴する存在となりました。
完璧な櫛歯を備えた〈ビュリー〉のアセテート製の櫛の虹色は、彼の色鮮やかな衣装からインスパイアされたものです。
『仮面と道化師(イタリア喜劇)』(1860)
モーリス・サンドより
アレクサンドル・マンソーの版画



